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不安定さを増すエネルギー市場
4月に起こった石油価格の暴落は記憶に新しいが、新型コロナウイルスの猛威はエネルギー市場の不安定さを広範に及ぼしているようだ。5月28日付けの日本経済新聞によると、液化天然ガス(LNG)や太陽光発電などでも需給ギャップが広がり、価格を大幅に押し下げているようだ。日本・アジア向けのLNGスポット価格が100万BTU当たり、2ドルを割り込んだのだ。
一見、この原油やLNGの価格下落は日本にとって良い事のように思えるが、日本の電力・ガス会社は、原油にリンクした長期契約でLNGを調達している。このため、需要低迷によるスポット価格の暴落は、在庫の積み上げとその価格差で経営悪化にも直結する。現在、長期契約に伴うLNGの到着価格は10ドル前後で約5倍の差を生んでいる。実際、九州電力では貯蔵しきれなくなったLNGをスッポト市場に転売し、140憶円の損失を出している。輸入に頼る日本では、どうしても長期的な契約に頼らざる得ず、この新たなリスクを生み出していると言える。
太陽光発電の価格も下落しており、多くの太陽光発電事業者は能力上限での発電が出来ず、発電しても値が付かない状態は経営の不安定要因ともなり、継続性が危ぶまれる。安定的なエネルギー源の確保と供給、持続的な事業者の育成は大きな課題となりそうだ。
国際再生可能エネルギー機関(IRENA)では、持続可能なエネルギーの供給は世界中で緊急の課題であり、SDG(持続的な開発目標) 7の実現のためにも、今すぐ取り組みを加速すべきと訴えている。
グローバルな再生可能エネルギーの市場予測
この中でも、グローバルインフォメーションなどのレポートでは、再生可能エネルギー全体の市場予測は、2020年の1,843億米ドルから2021年には2,261億米ドルに拡大し、年間平均成長率 22.7%で成長すると予測されている。EUでは、COVID-19は再生可能エネルギー市場のブラックスワンであり、これまで通りというより、BBB(ビルドバックベター)、つまりより進展しカーボンニュートラル大陸となると予測しています。環境と経済再生の両立は最大の命題であり、また実現可能と自信を深めています。また、中国でも再生可能エネルギー生産者が事業を再開し始めており、増加するエネルギー需要の確保を目指しています。また国際再生可能エネルギー機関(IRENA)は、「このコロナ過でも再生可能エネルギー市場は成長を続けており、再生可能エネルギーによる発電の競争力が安定的に向上する中、そのモジュール式の容易性、迅速な規模拡大、雇用創出の効果も相まって、各国、各地域が経済刺激策を検討する中で大きな魅力となっています。」と語っている。
再生可能エネルギーのコスト
これまでも再生可能エネルギーはその意義は理解されても、政府などの大規模な補助金がなければコストの面で現実的なビジネスになり得ないと思われてきた。しかし、IRENAによると、2019年の17,000件の再生可能エネルギーの発電コストは、概ね化石燃料による発電コストを下回ったようだ。「太陽光発電 (PV)のコストは2010年から82%低下し、集光型太陽熱発電 (CSP) は47%、陸上風力発電は39%、洋上風力発電は29%の低下となりました。2019年に新規に導入された大規模な再生可能エネルギーによる発電の設備容量の56%は、最も安価な化石燃料による発電コストを下回っています。」加えて日本政府も、近頃まとめた石炭火力発電の現状を整理した報告書の中で、発電コストについて、「14年には化石燃料の発電所が一番安い国が多かったが、20年前半には世界人口の少なくとも3分の2を占める国で、太陽光と風力が最も安くなった」としている。
再生可能エネルギーの地産地消
昨今、出光興産がエネルギーの地産地消の宣伝を始めた。地域の特性を生かした再生可能エネルギーの生産と活用で、その地域の活性化と持続的なエネルギー確保を実現するものだ。のエネルギー源の安定的な確保と供給、持続的な経営を可能とする市場価格の安定性を両立させ、また環境への配慮も合わせると、今後ますます石油や石炭に代わるエネルギー資源として、太陽光や水力、風力だけでなく、水素による発電や燃料電池の活用、バイオマス発電なども注目されるだろう。これまで補完的だったそれらのエネルギー資源の活用が、経済浮揚に大きな役割を果たすかもしれない。また、トヨタが進めるスマート実証プロジェクトである「コネクテッド・シティ」などとも相まって、施設毎の発電やP2P電力取引など、も急速に進むかもしれない。
成長する再生可能エネルギー市場
COVID-19により疲弊した世界経済を立て直すうえでも、またその成長機会を見逃さないためにも、今こそ再生可能エネルギー市場に積極的に投資すべき時だと思われる。特に日本では近年、大雨や台風による洪水などの災害が多発しており、その中でも市民生活を直撃する大規模停電なども経験している。このため、日本政府はCOVID-19後の経済対策を、政府のエネルギー戦略の更なる推進にも向けると予測される。また政府の途上国へのインフラ輸出計画も、国際的な批判の多い従来の石炭火力発電技術から再生可能エネルギー主体へ変化する兆しもある。日本のエネルギー関連企業には、この機会をぜひ獲得してもらいたい。
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