2020年のエネルギー需要予測
IEA(国際エネルギー機関)は去る4月30日、2020年のエネルギー需要の予測を発表した。これによると、
世界の電力需要は昨年比6%の減少
CO2の削減率は8%
特に石炭・石油・ガスなどの化石燃料による需要減少が大きい
太陽光、風力、水力などの再生可能エネルギーは安定
再生可能エネルギーの供給はコロナ後も増え続け、エネルギーMixが大きく変化する可能性がある
特に先進国でのエネルギー需要の落ち込みが顕著で、米国(-9%)、EU(-11%)となっている。これは現在、これらの国で行われている新型コロナ感染抑止のためのロックダウンが今後数か月で徐々に緩和され、経済もそれに従って回復する事を前提としている。また日本国内の4月の電力需要も対前年比3.6%の減少となった。全国で発令された緊急事態宣言は解除されつつあるが、今後の経済の回復や第二波、第三波の影響も無視できない状況である。この間LNG価格も前年比-1.9%と下落傾向が続いており、石油在庫も積みあがってきている。その他原材料輸入量は減少の一途を辿っている。
顕在化したエネルギー安全保障のリスク
人の往来が止まり輸出入が制限されている。経済活動は停滞し、原材料不足などにより物の生産などが大きな影響を受けている。一方、医療現場や市民生活を支える重要インフラは電力などに支えられている反面、発電などに不可欠な燃料価格は不安定な状態に陥った。そのため国の安全保障上の懸念も出ている。この安全保障の観点からも自国でのエネルギー資源の安定的な確保がより重要になると思われる。そのため、輸入資源に頼らず供給できる再生可能エネルギーによる発電や安定的に確保できる水素などの二次エネルギーの活用促進などへの投資も加速する可能性がある。
コロナ後に備えたエネルギー投資計画
現在も年々増加する再生可能エネルギーへの投資がコロナ後に更に加速し、エネルギーMixを大きく変える可能性が指摘されている。国は現在、再生可能エネルギーの比率を2030年までに14%、2050年には化石燃料と逆転する計画を打ち出しているが、これが大幅に早まる可能性がある。世界の経済が急激に回復するのか、緩やかなのかにも依存するが、今後求められる災害や感染症などに備えた設備投資の中で、医療施設やデータセンターなどの重要度の高い社会インフラ施設での燃料電池の活用など、自立性のあるエネルギー確保の動きは確実に加速するであろう。また、Fobesは5月20日の記事でこう述べている。「環境汚染の影響は誰もが受けており、年間約700万人の死につながっているほか、さまざまな呼吸器系疾患を悪化させ、それにはもちろん新型コロナなどのウイルスによる病気も含まれている。新型コロナウイルス感染症は今後、季節性となり繰り返し発生する可能性もある。」「国のエネルギー供給マップを再構築する意義はかつてなく高まっており、それは発展途上国でも同じだ。オーストラリアのような石炭大国でさえも、再生可能エネルギーの価格低下から大きな利益を得ることを計画しており、消費者に設置費を負担させずとも2040年までに太陽光と風力で90%のエネルギー供給をまかなえるようになると見積もっている。」このような再生可能エネルギー利用促進による環境負荷に対する貢献やその高まる経済性の享受は、さらに大きな投資を促す可能性が高い。Fobesでの結論はこうだ。「新型ウイルスのパンデミック(世界的大流行)を受け、エネルギー地図の再構築を基盤とした経済再構築を行うことは筋が通っている。今こそ時代遅れの考えは捨て、思考を変えて、再生可能エネルギーの使用を最優先すべきだ。」
危機の後で
人類はこれまでも様々な危機に直面してきたが、その後には大きな社会変革、産業変革と共に発展を遂げてきた。この新型コロナによる危機の先にも同様な変革の時代が訪れると確信する。そのための中長期的なエネルギー投資の計画が今、求められている。
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